環境省の方針転換と専門家の懸念
報道によると、環境省は当初、野生化した猫だけでなく野良猫なども対象に含める改定案を進めていたようですが、最終的にはこの案を撤回し、従来通り野生化した猫のみを「ノネコ」としてリストに掲載する方針を固めたとのことです。石原宏高環境大臣は、飼い猫まで殺処分の対象になるかのような誤解を招く危険性を理由に説明しています。
しかし、環境省が公開している「生態系被害防止外来種リストの見直しに係る検討会」の議事概要には、この方針に疑問を投げかける専門家の意見が繰り返し記録されています。
検討会で浮き彫りになった課題
-
第4回検討会(2025年2月19日)
-
森林研究・整備機構 森林総合研究所の亘悠哉委員は、ノネコとノラネコは区別が難しく、「ノネコ」という名称では生態系や感染症に大きな影響を与えるノラネコが外来種として評価されなくなると指摘。「イエネコ・イヌ」と記載すべきだと主張しました。
-
同研究所の川上和人委員もこれに賛同し、ノラネコが希少種を捕食している事例があるにもかかわらず、区別ができないために対応できないという経験を語り、「ノネコ」のみの掲載ではリスト作成の意義が失われる可能性があると述べています。
-
いのかしら公園動物病院の石橋徹院長は、奄美でのノネコ捕獲の際に、外に出ていた飼い猫が誤って捕獲された事例を記憶していると指摘し、現場での運用の難しさに言及しました。
-
これに対し、環境省事務局は、ノラネコと飼い猫の判別が難しい状況が、捕獲を推進する上での問題となるため、積極的にリストに掲載していないと説明しています。
-
-
第5回検討会(2025年10月23日)
- 亘委員は再び、「ノネコ」が鳥獣保護管理法上の呼称であり、外来種対策にはなじまないこと、ノラネコが含まれなければ実効性が失われることを強調しました。
どうぶつ基金が指摘する「明確な矛盾」
どうぶつ基金は、これらの議事録から次の3つの事実が確認できると指摘します。
- ノネコとノラネコは区別できない:複数の委員が、現場でノネコとノラネコを区別することは不可能であり、「ノネコ」のみの掲載では対策の実効性がないと述べています。
- ノラネコと飼い猫は区別できない:環境省事務局自身が、ノラネコと飼い猫の判別が難しく、それが捕獲推進の課題であると説明しています。
- 環境省は「ノネコ」掲載を維持する方針:にもかかわらず、今回「ノネコ」の掲載を維持する方針を示しました。

これらの点を合わせると、環境省自身の記録によって、ノネコ・ノラネコ・飼い猫の三者は現場で判別できないことが確認されていることになります。この状況で「ノネコ」だけを防除推進外来種として掲載すれば、判別できない以上、ノラネコはもちろん、飼い主のいる猫までもが防除の対象に含まれてしまう可能性が高いとどうぶつ基金は危惧しています。実際に、検討会では飼い猫の混獲事例も報告されているのです。
専門家が「実効性が失われる」と述べ、事務局が「判別できないため積極的な掲載はしていない」と説明したものを、そのまま防除推進外来種に残すことは、矛盾していると指摘せざるを得ません。どうぶつ基金は、掲載の根拠が環境省自身の記録の中に存在しない以上、「ノネコ」を防除推進外来種に残すことは行政の判断として正当化できない、と強く訴えています。
どうぶつ基金の要望と署名活動
どうぶつ基金は、この状況を受けて、イエネコ・ノネコ・イヌ・ノイヌを防除推進外来種から除外することを改めて要望しています。すでに環境省に対し、意見書を提出済みとのことです。
今回の件に関する環境省の検討会の情報はこちらから確認できます。
これまでに7万筆以上の署名が集まっているこの問題。どうぶつ基金は、国民の切実な声と不安を受け止め、環境省には透明性の高い再検討の場を設置し、「イエネコ」「ノネコ」「イヌ」「ノイヌ」を防除推進外来種に指定しない決断をすることを深く期待しています。

どうぶつ基金は、引き続きオンライン署名活動を行っています。この問題に関心を持たれた方は、ぜひ署名ページを訪れてみてくださいね。
公益財団法人どうぶつ基金は、1988年の創設以来、動物の福祉と適正管理に尽力しており、全国598の自治体と協働して「さくらねこ無料不妊手術事業(TNR)」を実施しています。これまでに44万頭を超える野良猫・多頭飼育崩壊の猫に無料で不妊手術を行うなど、長年にわたり活動を続けています。
この重要な問題について、私たち一人ひとりが関心を持ち、考えるきっかけになれば幸いです。
